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東京書店員さん訪問記 一覧

東京書店員さん訪問記

2016/10/24

第5回:大盛堂書店 吉田哉人さんを訪問 ~目の前は渋谷・スクランブル交差点 大盛堂書店の活気の源を探る!の巻~

今回の訪問先は、渋谷・スクランブル交差点のすぐそばにお店を構える、大盛堂書店さん。

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渋谷という街においてもっとも象徴的な風景である、このスクランブル交差点。
一度の青信号で最大3000人がすれ違うとも言われる、世界最大規模の交差点です。

映画やテレビ番組などで、「東京」や「社会」、「都会の若者」といったテーマの描写にモチーフとしてよく用いられるので、東京在住でない方にとっても見慣れた景色ではないでしょうか。
ソフィア・コッポラ監督の映画『ロスト・イン・トランスレーション』で登場したこともあってか、外国人観光客にとって日本のもっとも有名な観光スポットのひとつにもなっています。

さて、大盛堂書店さんがこの写真のどこにあるか、もうお気づきですか?

 

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この大きな看板が目印です。

ここは東京屈指の繁華街であるセンター街の入口でもあり、まさに渋谷のど真ん中。
店内はいつもお客さんで賑わっている印象です。
実際、吸い込まれるように立ち寄ってしまったという経験のある方も多いのではないかと思います。

なぜ、大盛堂書店さんにはお客さんを呼び込むような活気があるのでしょうか。
そこに迫りたくて、今回取材をさせていただくこととなりました。

 

大盛堂書店さんは小規模のお店のように見えて、実は縦に長いつくりになっているのも特徴のひとつ。
地下1階には漫画やゲーム雑誌、1階にはファッションやデザイン、アート、音楽といった幅広いカルチャーの雑誌や書籍、2階には文芸書や実用書などが並び、3階はイベントスペースとして用いられています。

なかでもお店の顔とも言えるメインフロアの1階で、15年にわたり働いていらっしゃるベテラン書店員の吉田哉人さんにお話をうかがいました。

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吉田さんは古書店で絶版の文庫本を探すのがお好きなのだそう。

 

 

急増した外国人観光客の来店

――日々働いているなかで、この立地だからこそ戸惑うことはありますか?

「驚かされるようなこともあるんですが、かなり感覚が麻痺している可能性はあります。渋谷はうるさすぎて嫌になっちゃう人もいると思うんですが、15年も働いているということは、僕はそのあたりがおかしくなっているんでしょうね(笑)。最近は、ここ数年で外国人観光客が本当に多くなったと感じていて、お店が観光スポットになればいいなと思っています。時間帯によっては外国人のお客様のほうが多いこともあるくらい大勢いらっしゃるので、どのように商品を案内したらよいかということも考えていますね」

――外国人観光客のお客さんからはどんなリクエストが多いですか?

「絵葉書や、英訳版の漫画のリクエストが多いですね。ほかにも青幻舎さんから発売されている、絵だけで描かれた『パラパラブックス』も売れていて、お客様からは“Fantastic”という感想をよく聞きます。本のことだけでなく道を聞かれることも多いんですが、『有名なスクランブル交差点って、まさかあれ?』と聞かれることがあるんですよ(笑)。時間帯によっては人が少ないので、思っていたよりもずっと小さく見えるんでしょうね」

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お店の入口付近にある外国人観光客向けのコーナー。『バラバラブックス』や英語版のガイドブックなどが並んでいます。

 

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地下1階には英訳版の漫画コーナーも。”MANGA”という文字が目印。

 

 

若い女性が多く訪れるお店

――スクランブル交差点は様々な年代や属性の人たちが行き交う場所だと思いますが、お店にいらっしゃるお客さんはどんな方が多いですか?

「若い――特に10代の女性のお客様が多いです。やはり渋谷は若い人が集まりやすい街ですし、特にうちのお店は109がすぐそばにあったりして、洋服屋さんが多い立地。それに、そもそもお店の棚がピンクですからね……(笑)。開店当時の責任者がいないのでピンクにした理由はよくわからないんですが、それはかなりレンジを狭めて、うちのお店のイメージを決定づけたと思います」

――若い女性のお客さんが関心のある分野というと、どんなものでしょうか。

「やはりファッションですね。ほかにもアイドル雑誌やコミック、実用系の本もよく売れますし、学生さんだと就活本や資格の本を買われる方も多いです。若い女性に人気のある作家さんのトークショーにも足を運んでいただいています」

 

 

ジャンルレスにトレンドの本を盛る

――お店のなかで特に印象的なのが、入ってすぐの場所にある、様々なジャンルのトレンドの本が置かれているコーナーです。メイク本やスタイルブックがあったり、宇多田ヒカルさん関連の本があったり、レシピ本があったり……。トレンドの盛り合わせのように積まれているのが、なんだか熱気があって、おもしろいですね。

「あそこはどうしても、文芸書を置いてもまったくの無反応になってしまうんです。どういうものを置けば反応があるかというと、隣にファッション誌が置かれているので、それと近いジャンルの本。だからエンタメ系のノリになっています。実は、あそこはいつも試行錯誤しているんです」

――どんなところが難しいんですか?

「あの平台が三角形なので、それをどう活かして、どんなふうに置くかということですね。それはこの15年間の課題。毎日、テトリスだと思ってやっています(笑)。はみ出しすぎてもいけないし、でもいっぱい盛って、目立たせたい。悩みながら毎日入れ替えているので、あそこのディスプレイの仕方は、僕のなかでは『今日の僕です』と言っているような感じです(笑)」

――売れ筋の商品をお店の目立つ場所に集めて置いているのはいろんな書店で見かけますが、ジャンルごとにそれぞれの売り場で展開されていることが多いと思うんです。でも、こちらではジャンルレスにひとつの山にして置かれているというのが、小規模の大盛堂書店さんならではだなと思います。

「メイクやファッション、レシピなどの棚は2階にあるんですが、そこに入れてしまうと目立たないんです。でも1階に置いて目立たせたい本もある。だから、本来の棚と1階の目立たせる棚の両方で展開するようにしています」

――カテゴリをまたいで置くという意味では、ファッション誌が並んでいる棚に、藤田ニコルさんや越智ゆらのさんのスタイルブックも一緒に置かれていますね。

「あそこは意識的に置いているんですよ。藤田ニコルさんも越智ゆらのさんも、うちでイベントをやったこともあるんですが、彼女たちと近しいお店だというイメージを10代のお客様に持ち続けてもらうことが大事だと思っています。それで、映えるようにちょっとニッチに並べているんです。実際、うちのお店で『Popteen』や『Seventeen』、『LARME』あたりの雑誌を買ってくださるお客様が、そういうモデルさんの本を買ってくださっているのは数字にも表れています」

――では、かなり効果的なんですね。

「そうですね。こういった“クロス陳列”はこの業界では当たり前になっていますが、やっぱり大事なことだと思います」

 

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1階の中央にある平台。様々なジャンルの本がピラミッドのように陳列されています。

 

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女性誌コーナーの最前列には、若い女性に人気のスタイルブックがずらり。

 

 

人々を呼び込む、独特の雰囲気

――大盛堂書店さんの魅力のひとつに、「お店への入りやすさ」があると思うんです。もちろんこの立地も影響しているとは思いますが、それだけではなく、「いらっしゃい、いらっしゃい」って呼び込まれるような独特の雰囲気があるように感じていて。

「それはうれしいです。ここって“むき出しな場所”なんですよ。路面ですし、方角が南東に向いてるので、吹きっさらしなんです。本は太陽の光を浴びちゃいけないので、普通は書店って北向きがいいんですけどね(笑)」

――そういう店構えが呼び込まれるような活気を生んでいるのかもしれないですね。それに、店内の雰囲気からもそういう活気が伝わってきます。

「うちのお店では、お客様がいらっしゃったときには『いらっしゃいませ』、お帰りになるときには『ありがとうございました』と必ずお声がけをしているんです。昔、永六輔さんが『書店員はなぜいらっしゃいませと言わないんだ』というようなことを書かれていたことがありましたが、実は『いらっしゃいませ』と言う書店ってあんまりないんですよ。うちは落ち着いた感じのおしゃれなお店というわけでもないですし、商売人として『商売をしてるんだぞ』という気持ちも込めて言っています(笑)」

――そういう「商売をしている」という意識は、陳列や内装にも表れているように感じます。

「うちのお店はほかの書店と比べて、圧倒的にポスターが多いんです。なぜかというと、ここは広告がいっぱいあって騒々しい立地なので、もうお店もそれに合わせちゃえと思って。出版社さんにお願いしてポスターをもらっているんですが、宣伝効果もあるし、お客様を呼び込める。内装としてはうるさいですけど、それが活気を生んでいるならいいなと思います」

 

 

渋谷という街の空気感を感じられる場所

――こちらで15年働いていて、渋谷という街の変化は感じますか?

「かなり変わってきたと思いますね。リーマンショックの前まではキャバクラ雑誌やホスト雑誌がすごく売れていて、そういう本を1階に置いていた時代もありました。その頃と比べて一番わかりやすい変化というと、ファッションのトレンドです。当時の“ギャル”や“ギャル男”と言われていた人たちがいなくなりましたからね。2年前のノームコア(“究極の普通”を意味するファッション用語)ブームを境に、ギャル系のファッションは見なくなったんです」

――この渋谷のど真ん中にいると、そういう世の中の移ろいや時代の空気感みたいなものを、皮膚感覚として感じられそうですね。

「そうですね。それを素直に受け止めて、品ぞろえに反映していくよりほかないだろうと思っています。それに加えて、海外からのお客様が増えたという流れもある。そういう、いろんなもののかけ合わせのなかをうまく駆け抜けていくことができればいいだろうと思っているんです。お客様は渋谷にいろんな目的でやってくるので、それぞれのニーズにピンポイントで本を提供できればいいし、それが売れれば理想的ですね」

 

 

クセのある本もサジェストしたい

――大盛堂書店さんは、トレンドの本が並ぶなか、ちょっとマニアックな本も棚にささっているのがおもしろいなと思うんです。例えば音楽の棚には、ミュージシャンが書いた本に混じって、例えば『ニッポンのマツリズム』といった、毛色の違う、少しアカデミックな本もありますよね。

「それは僕が入れている本ですね(笑)」

――そうでしたか(笑)。どのような意図があるんですか?

「もちろん話題の本や新刊も置いているんですが、本屋で働いている身として『こういう本もあるよね』というサジェストをしておきたいんです。だからちょっとクセのある本も、不易流行の本も、両方バランスよく置けたら一番いいなと思っています。もちろん、どの書店にもありそうな本だけを見て帰ってもらってもいいんですが、『ああ、こんな本もあるんだ』と記憶にとどめてもらえるだけでもいい。あとは、その人が好きなときにその本のことを思い出すことができればいいだろうと思うんです」

――なるほど。それはなんだか、本が好きな方の発想だなと思います。単純に、売れ筋の本だけを取りそろえておけばいい、ということではないんですね。

「それは売り上げにつなげるためにも大事なことなんです。というのも、一緒に置かれている本によってその本が買いたくなるかどうかが変わってくることがある。つまり、売れている本だけじゃなく、そういう本と担当者が売ろうとしている本をどう組み合わせていくか、そのケミストリーがすべてだと思います」

 

 

待ち合わせ機能のある書店を目指す

――大盛堂書店さんって、非常に利便性の高いこの立地と、探しているものを見つけやすいコンパクトな規模感からして、「この本を買いたい」と目的が決まっている人が多くいらっしゃるお店なのかなと思うのですが、実際はいかがでしょうか。

「実際に“目的買い”のお客様はよくいらっしゃいます。でもその一方で、無目的に来ていただける場所にしたいという思いもありますね。この間、とあるセミナーで、『最近、無目的に本屋へ行くということがなくなっていて、本屋はだんだん待ち合わせ機能がなくなってきている』という話を聞いたんです。でもうちのお店の場合は、商売をするには本当にいい立地なので、そこをどう活かしていくかが生き残る術だと思っています。そのためにはアイキャッチになるものをたくさん仕込んでおいて、不特定多数の人にアピールすることが大事。そしてうちのお店が、読者と出版社との間の媒体として楽しめる空間になればいいんじゃないかと思っています。そのために、これからもがんばっていきたいですね」


<店舗情報>
大盛堂書店
東京都渋谷区宇田川町22-1
TEL 03-5784-4900
営業時間 9:30~21:00 不定休
HP http://www.taiseido.co.jp/

 

【まとめ】

大盛堂書店さんは、ユニークな書店です。
何がユニークかというと、例えばその立地条件や、外国人観光客の来客が多いことなど、いろいろと挙げることができますが、なかでも私がもっとも特徴的だと思うのは、お店の「雰囲気」です。

その店構えに、まるで手招きをされているかのように呼び込まれる感覚があり、ひとたび足を踏み入れると、「探してた本はこれでしょ?」「こんな本もあるよ」と本に話しかけられているような気分になるのです。
これを「活気」と言うのだと、お店へ訪れるたびに思います。

集客という観点から見れば、この立地条件は最高のアドバンテージと言えるかもしれません。
しかし、単に人通りの多い場所にあるからと言って、どんなお店にも活気が生まれるわけではないということを痛感した取材でした。

渋谷という街に流れる空気感を肌で感じながら、それをお店づくりに反映していく柔軟性。
そして、トレンドの本を取りそろえることに安住せず、書店としてのおもしろさを追及し続けていく姿勢。
それがあるからこそ、大盛堂書店さんは「活気のある書店」なのだと思います。

 

【本日の手土産】

今回お持ちしたのは、築地市場内にある喫茶店・センリ軒さんのヒレカツサンド!

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テイクアウトすると、レトロなシールがかわいいパックに入れてくださいます。

 

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ぱかっと開けた瞬間に広がる、食欲をそそるバターの香りをかいでしまったら、もうかぶりつかずにはいられませんよ。
カリッと焼かれたトースト、肉厚でジューシーなカツ、甘じょっぱいソースに、ピリリときいたマスタード……。
初めて食べるのになんだか懐かしいような、ほっとする味わいです。

冷めていてもすごくおいしいですが、昔ながらの雰囲気が楽しい店内でいただくのもおすすめ。
築地市場が移転する前に、お早めにぜひ。


<店舗情報>
センリ軒
東京都中央区築地5-2-1 築地市場 8号館
TEL 03-3541-2240
営業時間 4:00~12:30

 

2016/07/27

第4回:三省堂書店池袋本店 新井見枝香さんを訪問 ~新井さんがプッシュする本はヒットする! カリスマ書店員が抱き続ける「本への思い」とは?の巻~

 

第4回目は、三省堂書店池袋本店さんの新井見枝香さんを訪問しました!

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池袋本店さんは2015年12月にオープンした、都内屈指の超大型書店。なんといっても目を見張るのは5階分のフロアにひしめく本の品揃えの豊富さです。「ここに来れば何でも置いてあるに違いない」と思わず確信してしまうような貫禄があります。

 

たとえばアート系の書籍も驚きの充実ぶり。

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西武池袋本店内にあるのですが、上品な雰囲気がこちらにも漂っていて、デパートに訪れたときのようなうきうきとした高揚感に包まれます。

そんな池袋本店さんには、イベント専用のスペースが設けられており、新井さんはそこで行うイベントを担当する傍ら、文芸書の単行本も担当するという、二足の草鞋を履く大忙しの日々を送っています。

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もしかすると「新井さん、知ってるよ」という方も多いかもしれません。それもそのはず、巷では「新井さんがプッシュした本はヒットする!」という都市伝説(?)も流れるカリスマ書店員なのです。

さらに、お店の公式ツイッターの「中の人」として活躍するほか、お店で「新井ナイト」というイベントを主催したり、芥川賞・直木賞ならぬ「新井賞」という賞をつくって受賞作を発表したりと、バラエティに富んだ活動をされています。

それらはすべて、新井さんが立候補や発案をしたことなのだそう。エネルギッシュで社交的な方なのかと思いきや、「私は本当は暗い」と話します。そんな新井さんが、積極的に自ら発信しようとする姿勢の根底には、幼い頃から色褪せることなく抱き続けてきた、本や書店にたいするまっすぐな思いがありました。

 

 

好きな気持ちは、お客さんに伝わる

――三省堂書店有楽町店のカリスマ書店員として長く活躍されてきた新井さんですが、池袋本店にはいつ異動されたんですか?

「池袋本店がオープンする1年くらい前に新店準備室へ異動になりました。その頃はオープンに向けて本の発注をしたり、出版社の方とイベントや新刊の話をたくさんしたりして、けっこう忙しかったですね」

――有楽町と池袋では、本の売れ方は違うものですか?

「違いますね。有楽町は、ニュースやネットで話題になったような、ミーハーな本が特に勢いよく売れるし、そういうものにたいする反応も一番早いんですよ。だから最先端という感じがします。一方で池袋は――これは地域性というよりも立地によるものだと思うんですが、デパートのなかにあるということもあるし、三省堂書店がオープンする前にもともと書店さんがあったという文化もあって、自分の感覚で選ぶ人が多いです。それに、とにかく本に詳しい。だから、有楽町では正直なんとなくやっていた海外文芸や短歌、詩、俳句、古典をこちらに異動してからかなり勉強しました。でもやっぱり『勉強してる』っていう段階ではだめなんですよ」

――どうしてですか?

「あるとき、すごくいい短歌の本を一冊見つけて、『短歌ってめっちゃいい!』って思ったことがあったんですね。そのときに自分がつくった棚を見て『なんだ、この棚だめじゃん』って気が付いて、一冊一冊見ながら気が狂ったように直したんです。そしたら、売り上げがビューって上がったんですよ」

――へえー!

「毎日、『本日の短歌』というのを一首選んで、書いたものを棚に置いてるんですけど、最近はちょっと色気を出して、横にその短歌が載っている本を置いてみたら、翌朝には本がなくなってるんですよ! それは、最近ちょっとうれしいですね」

――やっぱり自分が本当に好きにならないと――。

「バレますね(笑)」

――でもそれがお客さんに伝わるっていうことがすごいですね。

「何が違うのかは本当にわからないんですけどね。最近は海外文芸を読みだしたら、やっぱりすごく伸びてきました。出版社の海外文芸の営業さんがいらっしゃると『棚が変わった! すごく見やすくなった』っておっしゃるんですよ。『わかるんだあ』と思って。だからね、本当に生き物ですよね」

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「本日の短歌」が飾られる短歌コーナー。おとなりには俳句コーナーが並んでいます。

 

 

本を買うことが好き

――書店員として働き始めたのはいつ頃だったんですか?

「7年くらい前ですね。三省堂書店の有楽町店にアルバイトとして入ったのが最初です。もともと三省堂書店が好きで、有楽町店はいつも行っていたんですけど、あるときお店に『アルバイト募集』のポスターが貼ってあるのを見て、面接を受けました」

――どういうところが好きで行っていたんですか?

「手ごろなサイズなんですよね。そこまで広くないので、新刊が必ずわかりやすく置いてある。それに、POPもついていて、必ずほしいと思うものがあったんです。なんていうか、八百屋みたいに『買え買え、買え買え』って訴えかけてくるような積み方がされていて、そういうところがいいなと思ってました。“飾り”ではなく“売り物”という意味での置き方と言ったらいいのかな」

――本屋さんに興味がないと、どこのお店も同じに見えてしまう気がするんですが、働く前から「この本屋のここがいい」という視点があったというのは、もともと本屋さんに興味があったんでしょうか。

「小学生くらいのときから本屋さんに行くのが好きでした。父親と一緒に行って、お小遣いをすごく使ってましたね。八重洲ブックセンターに行くのもすごく楽しみだったし、地元のちっちゃい本屋さんにもよく行ってました。それぞれの良さがあるんですよね」

――小さい頃から本が好きだったのは、ご両親の影響ですか?

「親もよく読んでました。でも親の本を借りることはあんまりなかったです」

――では、本屋さんに行って買ったものを読んでいたということなんですね。

「そう。“本を買うこと”が好きだったんです。やっぱり、買うときが一番幸せじゃないですか」

――わかります(笑)。「買ったぜ!」っていう高揚感がありますよね。それが好きというのは、いまでも変わらないですか?

「そうですね。この前の休みの日は渋谷に行ったんですけど、新しくできた『BOOK LABO TOKYO』というブックカフェに行って、そのあとHMV&BOOKS TOKYOに行って、紀伊国屋書店西武渋谷店も行って……。結局どこかに出かけても、本屋さんばっかり行っちゃうんです」

――仕事としてリサーチのために行くのではなく、趣味として、休みの日もついつい足が向いてしまうんですね。

「大体もう、『何買ってやろうかなあ』って気持ちで行ってます。自分のお店でもそうで、仕事が早く終わったときは『おーし、買ってやろう』と思って店内を見ています」

――自分のお店も、そういうお客さん目線で見渡してみることで気づくこともありそうですね。

「私がつくる棚って、おしゃれなディスプレイのような棚にはならないんですね。それはたぶん、本屋はショールームじゃないので、やっぱり八百屋感覚があったほうがいいと思っているからだと思います」

――なるほど。新井さんがお客さんとして『買ってやろう』という気持ちになるような、購買意欲のわく棚かどうかというのがひとつのポイントなんですね。

「そういう棚のつくり方というのを、有楽町時代に体で覚えた感じがします」

 

 

POPに込める、読みたくなったときの気持ち

――新井さんのお名前がお客さんの間で浸透していったきっかけというと、新井さんがつくったPOPが話題を集めるようになったことだったんでしょうか。

「そうかもしれません。でも大したPOPも作っていなくて。工作とか字を書くのとか、あんまり好きじゃないんですよね。だからPOPを作りたいから作ったんじゃなくて、売るためにそれしか方法がなかったので、やっただけという感じです」

――ただでさえ人にものの良さを伝えることってすごく難しいなと思うんですけど、POPって、限られたスペースのなかで、目を引くキャッチ―な言葉を書かなきゃいけないわけですよね。

「POPって、よく自分の感想をすごく熱い勢いで書いちゃったりしがちなんですけど、それは普通の気分でいる人にとっては白けるものなんですよね。それに、感動したとか、泣いたとかっていうのは、逆に言うと『泣けなかった私って何なんだろう』って思っちゃったりもするし(笑)。そこじゃないんですよ、たぶん。たとえそれが本質じゃなかったとしても、その小説のなかに自分が読んでみようかなって思った“引き”を書けばいいのであって、読んだ後のことは関係ないんですよ。自分のなかで『これ読んでみようかな』っていう取捨選択がもちろんあるので、その決め手を書くようにしています」

――なるほど! 目から鱗です。確かに、大事なことは、まだ読んだことのない人が読んでみようと思うきっかけをつくることですもんね。それに気が付いたのはいつ頃ですか?

「有楽町時代の上司が、そういうPOPを書く人だったんです。私がまだアルバイトだった頃、文芸担当でもなんでもないのに、POPをつくって持って行ったら『貼っていいよ』って言ってくれて。褒めてくれるときもあれば、『これはないな』と言われるときもあって、それでだんだんわかってきたかなあ。すごく鍛えられました。すばらしい方でしたね」

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POPではなく、手作りの帯を巻いて本を紹介することも。「この帯が巻いてある本をレジに持って行っていただいて構わないんですけど、皆さん、巻かれていないものを下からとってレジに持って行かれますね(笑)」と新井さん。

 

 

お客さんとの距離が縮まる、ツイッター

――新井さんは、お店の公式ツイッターを運営する「中の人」としても知られていますね。

「有楽町店でツイッターを始めることになったとき、まだアルバイトだった私がなぜか『私、ツイッターやります!』って立候補したんですよ。いまもプライベートではやってないですし、別にツイッターが好きなわけじゃなかったんですけどね。最初は言葉が乱れすぎていたりして、けっこう失敗もしたんですけど、いろいろ試行錯誤しながらたくさんツイートしていきました。心がけていたのは、何か話しかけられたら『はい』の一言でもいいから、100%答えるということ。それだけは礼儀じゃないかなあと思って。それでだんだん、お店に来てくれる人が増えていきました」

――実際にお店でお客さんから「新井さんですよね」って話しかけられたりもするんですか?

「めっちゃ多いです。『おすすめしてた本、おもしろかったよ』と言ってくださったり、おすすめの本を尋ねられたり。本をすすめるには、やっぱりその方の話を聞かないとわからないので、『どんな本が好きで、それを読んでどう思ったか』ということなどを聞いていくうちに、あれかな?って思いついた本をおすすめします」

 

 

著者に聞きたいことを聞く、「新井ナイト」

――新井さんが聞き手になって著者の方とトークショーを行う「新井ナイト」というイベントは、どんなきっかけで始まったんですか?

「もともと自分が作家さんとしゃべるというイベントはやっていたんですが、あるときショートショート作家の田丸雅智さんが『“新井ナイト”っていう名前にしたらいいんじゃないの』とおっしゃって、そこから始まったんです。新井ナイトの場合は、自分がやりたくて著者の方にお願いして、自分も出るというスタンスでやっています。それが一般的なサイン会との違いですね」

――作家さんにどんなことを質問するんですか?

「その本によるんですけど、例えばミステリーだったら、最初から章ごとに追っていって、疑問に思うことを聞いたり。エッセイだったら、自分の話もして、その作家さんに相談に乗ってもらったり……」

――インタビューというより、一読者として作家さんとお話をするような感じなんですね。

「そうですね。よく雑誌に載ってる作家さんのインタビューって、言わなきゃいけないんでしょうけど、『どういう経緯で書いた』とか、お決まりのことが書いてあることが多い。それってもう、大体何かの媒体で言っていることだから、同じことを聞いてもしょうがないと思うんです。当日は、基本的に打ち合わせは一切しないし、私も何を話すか考えていないので、話している最中に思わぬところで新しい気付きもあったりもします」

――ぶっつけ本番で、緊張はしないんですか?

「しないんですよね、全然。基本的に、その人の書いたものがおもしろいと思って、興味があってお呼びしているので、聞きたいことは山ほどありますからね」

 

 

一番好きな本に贈る、「新井賞」

――芥川賞と直木賞が発表される日に、新井さんが独自につくった「新井賞」を発表して話題を集めています。とてもユニークな取り組みですが、これが誕生したきっかけは何だったんでしょうか。

「第一回目の新井賞は千早茜さんの『男ともだち』だったんですが、これが直木賞候補だったんですね。でも獲れなかった。私はいつも、良いと思う本をいっぱい注文するので、『はい、直木賞獲れませんでした。返品しましょう』というのはおかしいだろうと思って。それに獲れなかったことで価値が変わるわけじゃないのに返品するのは嫌だったので、『じゃあ、新井賞です』って。自分の顔と一緒に『新井賞』と書いたオリジナルの帯を巻いて売ったのが始まりです」

――反響はいかがでしたか?

「すごく売れました。第一回目のときだったか、直木賞を受賞した本より売れたこともありました。たぶん、お客さんもよくわかってないんですよね。『あなた。直木賞と、芥川賞と、新井賞が出てるわよ』って(笑)。なんだかわからないけど賞を獲ったらしい、みたいな感じだと思います。でも、力技でも推して、手に取ってもらえればいいんだって思いました」

――選考基準はどんなものなんですか?

「一番好きっていうことでしょうか。評論はできないし、どれが売れるかなんて正直わからないんですけど、いろいろ読むなかで『あ、一番好きだ』と思った本。あとは、それまでの作品の良し悪しは関係なく、作品単位で見ています。それは普段の仕入れにも言えることで、新井賞に選んだからといって、その作家さんの次に出る本を絶対にいっぱい置くかっていったら、そんなことはないです。そういうふうに、何にも利害関係がないし、賞金もない。普通の人が選んでいるところがいいんじゃないでしょうか」

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取材後に発表された第5回新井賞は、彩瀬まるさんの『やがて海へと届く』が受賞(池袋本店さんのツイッター @ikehon_sanseido より写真をお借りしました)。帯は新井さんがパソコンで手作りするのだそう。

ちなみに、これまでの受賞作はこちら。

第1回 千早茜『男ともだち』
第2回 早見和真『イノセント・デイズ』
第3回 辻村深月『朝が来る』
第4回 角田光代『坂の途中の家』

 

 

「社会人だとしても『好きなものを売りたいです』って言っていいと思う」

――新井賞も新井ナイトも、そこに新井さんの、一読者としての主観が大きく反映されているところがおもしろいなと思います。その本にたいするピュアな「好き」という気持ちが伝わってくるから、受け手もまっすぐに受け止めることができる。だからこそ、新井さんの言動は人の心に響くんじゃないかなと思います。

「そうか、“読者”かもしれないですね。この前、『なんでそんなに頑張るんですか』って聞かれたことがあったんですけど、それは“単行本”がなくなったら困るからなんです。私は文芸の単行本が担当なんですけど、文庫本じゃなくて単行本の形で発売されるのをめっちゃくちゃ楽しみにしてるんですね。だから、あれを買って帰るという楽しみがなくなっちゃうと困るんです。電子書籍を悪いとは言わないけど、本っていいじゃないですか、めっちゃくちゃ。持った感じとか――あれは何ものにも代えがたい。だから結局、自分のためなんですよ」

――今回の取材を引き受けてくださったこともそうですし、ツイッターや新井ナイトもご自身からやるとおっしゃっていて、積極的に表舞台に出られていますよね。それは「本がなくなってしまわないように、たくさん本を売っていきたい」という気持ちが根っこにあるからこそ、できることなのでしょうか。

「そうですね。基本的に、私はあんまり人としゃべるのが好きじゃないし、すごく暗いんですけど、そうするしかないのでやっています。それに、新井ナイトではいろんな作家さんと腹を割った話をすることができて、学ぶことも多い。自分が聞きたいことをいっぱい聞いているので、とても勉強になるんです。だから、それも要するに自分のためかもしれません。本当だったら、ただただ暗い部屋でずっと本を読んでいたいです(笑)。でも皆がそうしていたら、本はなくなっちゃいますからね」

――お話をうかがっていて、新井さんを突き動かしているのはいつも、「本が好き」というピュアな気持ちなんだなと感じました。

「たまに『仕事なんだから割り切らなきゃいけない』とか、『好きとか嫌いとか言ってるんじゃない』って言われるけど、私はやっぱり好きなものじゃないと売れない。わりとみんな『社員だから、なんでもやりますよ』って言うけど、『私は文芸じゃなかったらヤです』って言っちゃう(笑)。もちろん、やってみたら楽しさがわかるのかもしれないですけどね。でも社会人だとしても、そういうことを言っていいんじゃないかなと思うんです。『好きなものを売りたいです』って」

 

 <店舗情報>
三省堂書店池袋本店
東京都豊島区南池袋1-28-1 西武池袋本店 別館地下1階・書籍館地下1階~4階
TEL 03-6864-8900
営業時間 10:00~22:00
HP http://ikebukuro.books-sanseido.co.jp/

 

【まとめ】

ここでご紹介したお仕事のほかにも、雑誌『BRUTUS』の小説特集でおすすめの本を紹介されていたり、ラジオ『真夜中のハーリー&レイス』にゲストとして出演されていたりと、新井さんをメディアでお見かけすることがたびたびあり、いつか取材をしてみたいと思っていたお方でした。

一番興味があったのは、表舞台へ出ることに、どんな思いを持って臨まれているのだろう、ということ。もしかしたら誰かに批判されて傷つくかもしれないし、失敗して恥をかくかもしれない。人前に出て何かを発信するということには、足がすくむような恐ろしい側面もあります。もしも自分だったら、と考えると、生半可な気持ちではとてもできないと思うのです。

実際にお話をうかがっていて一番印象的だったのは、「千早茜さんの『男ともだち』、私もすごく好きです」と伝えたときに、パァっと明るくなった新井さんの表情でした。

この方は、本当に本が好きなのだ。そして、好きなことだから頑張れるお仕事なのだろう――。

しかし、そんな私の想像を飛び越えて、「単行本を買って帰るという楽しみがなくなったら困るから、結局は自分のためにやっている」とおっしゃった新井さん。その瞬間、新井さんの本への思いと、新井さんの仕事のすべてが一本の線でつながったようで、思わずぽんと膝を打ちました。

工作も文字を書くのも好きじゃないけれどPOPをつくり、ツイッターが好きなわけじゃないけれど運営に立候補し、人と話すのが好きなわけじゃないけれどトークイベントを主催する。新井さんはいつも、それが本を売るために必要なことならば、得意ではないことにも自ら取り組んできたのです。

何かをまっすぐに好きだと思う気持ちは、こんなにもエネルギーとなり、そしてこんなにも受け手の心を動かすものなのだと感じ入り、取材を終えたときには、なんだかむくむくと勇気がわいてきたのでした。

 

【本日の手土産】

今回は築地市場外にある、さのきやさんの「まぐろやき」をお持ちしました。

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「まぐろやき」って、お魚のまぐろを焼いたお惣菜じゃありませんよ。まぐろの形をした「たいやき」なんです。

なんでもお店の奥様のアイディアで、「築地で出すんだから、築地らしくまぐろの形にしよう」と思いついたんだとか。

味は「本マグロ」と「中トロ」の2種類。ネーミングも洒落がきいています。

本マグロは外側がパリッ、内側はフワッとした二重の食感が楽しめる皮で、小倉あんが包まれています。

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一方、中トロの皮はもっちもち。しかも、小倉あんの中にあんずが入っているんです。

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小倉あんは、北海道十勝産の最高級品種小豆「豊祝」と鬼ザラ目を用い、直火銅釜でじっくりと炊き上げているのだそう。そんなこだわりのあんに、甘ずっぱいあんずの相性が抜群。これは新発見でした。

ちなみに、手土産でお持ちするのは難しいのですが、こちらの「ウメスカッシュ」もおいしいんです。

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ごろっと梅の実が入っているところに、手作りのあたたかみを感じます。子どもの頃、夏になるとよく飲んでいた、祖母お手製の梅シロップを薄めて作った梅ジュースの味を思い出して、なんだか懐かしい気持ちになりました。

そういえば、映画『海街diary』で梅シロップを美人姉妹がきゃっきゃと作るシーンも素敵だったなあ、なんてことも思い出して、きゅんとしてしまいました。とにかく飲んだら、ノスタルジックな気分に浸ってしまう一品です。

暑い夏の日、甘ずっぱくてシュワシュワのウメスカッシュを片手に築地散策もいいかもしれません。

 

<店舗情報>
築地 さのきや
東京都中央区築地4-11-9 築地場外
TEL 03-3543-3331
営業時間 7:00~15:00

 

 

2016/04/25

第3回:福家書店 新宿サブナード店 村澤店長を訪問 ~「女性がきれいになるお店」にリニューアルした真相に迫る!の巻~

 

第3回目は、福家書店 新宿サブナード店さんにお邪魔しました!

タレントさんの写真集などが発売されるときに、握手会などのイベントが開催されることの多い新宿サブナード店さん。そのイベントの数たるや、年に約200回にものぼるんだとか。『MEKURU』の出版元であるギャンビットパブリッシングでも、斎藤工さんの写真集や、伊藤千晃さんの写真集の発売時に握手会を開催させていただきました。

そんな新宿サブナード店さんですが、2014年の8月、女性を対象にした書店として大リニューアルされたことでも話題に。今回はそのリニューアルの真相に迫るべく、じっくり取材させていただきました。するとそこには、「現代における書店のあり方とは?」というテーマを考えさせられる、興味深いヒントが溢れていたのでした。

 

リニューアルでここが変わった! 4つのポイント

リニューアルのコンセプトは「女性がきれいになるお店」。内面からも外面からもきれいになれるような商品をとりそろえているのだそう。ただ、こちらのお店がすごいのは品ぞろえだけではありません。女性の心をきゅんとときめかせる世界観が徹底的につくりあげられているのです。まずは、どのようなところが「女性仕様」になっているのか、店内の様子をリサーチしてみましょう!

 

ポイント1▷シャビーシックな内装

一般的な書店というと、つるつるとした白い床に、パキっと明るい蛍光灯、所狭しと並ぶ大きな本棚――そんな空間をイメージする方が多いと思います。新宿サブナード店さんも以前はオーソドックスな内装だったのですが……。

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リニューアル後、ウッディな素材を基調とした、まるでカフェのような雰囲気に! なんでも「シャビーシック」をテーマに、落ち着けて、癒されるような空間を目指したのだそう。全体的に木の温もりが感じられるうえ、照明はやや暗く、ほのかにアロマの香りも漂います。

お店の中央に設置された女性誌コーナーは、ゆるやかにカーブを描く形状の棚がユニーク。まるでお客様をやさしく出迎えているような印象を受けます。

 

ポイント2▷9つのカテゴリ

店内を見回すとパッと目に入るのが、棚に掲げられた各カテゴリのプレート。

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 一般的な書店では、棚に「趣味」や「実用」といったカテゴリが書かれているのをよく見かけますが、こちらでは「CULTURE」、「BEAUTY」、「HEALTH」、「LOVE」、「SPIRITUAL」、「SKILL」、「COOKING」、「TRAVEL」、「LIFE」という独自のカテゴリが9つ設けられています。どれも女性の関心を引きそうなキーワードです。

 

ポイント3▷驚くべき雑貨の充実度

9つのカテゴリに沿って、本はもちろんのこと、雑貨も非常に充実していることに驚かされます。

例えば「BEAUTY」の棚をのぞいてみると……。

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お風呂にまつわる本とともに、入浴剤がズラリ!

 

ほかにも、羽ペンのコーナーがあったり……。

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みんな大好き、猫をモチーフにしたグッズのコーナーも!

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写真はほんの一部ですが、まるで雑貨屋さんのような品ぞろえです。

 

ポイント4▷ガ―リーなPOPや装飾

いたるところに施されたPOPや装飾も、もちろんガ―リー。

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かわいいものについ目が奪われてしまうのが女子の習性。見ているだけでうきうきするような棚に仕上がっています。

こちらは「LOVE」の棚なのですが、ほかにもモニターで映画『ローマの休日』が上映されていたりと、思わず恋愛へのモチベーションが上がってしまうような工夫があちこちに施されています。

 

このように、女性向けの書店として抜本的に生まれ変わった新宿サブナード店さん。そのリニューアルの意図や経緯を中心に、店長の村澤優子さんにお話をうかがいました。

 

ニッチな分野でナンバーワンを目指す

――女性向けのお店にリニューアルすることになったきっかけは何だったんでしょうか。

「このお店の向かいに『コミックストア』という福家書店のコミック専門店があるんですが、そこではもともと、BLを買われる――いわゆる腐女子さんをターゲットにしていたんです。その影響で、こちらのお店にもいらっしゃるお客様は女性が多かったんですね。それを受けて、思いきって女性向けの店舗にリニューアルすることになりました」

――例えばファッションビルのなかにある書店は女性向けの本が充実していたりして、立地に合わせて品ぞろえに特色を出しているお店はありますよね。でも、ここまでお店全体をガラッと女性向けに変えるというのは、かなり思い切ったシフトチェンジに思えるのですが、大幅なリニューアルに踏み切ったのはどうしてだったんでしょうか。

「ちょっと変えたくらいでは誰も気が付かないから、というのが理由のひとつです。それに、今はなかなか本が売れなくなってきていて、書店業界は厳しい局面を迎えているというのが現状。そのなかで生き残っていくために、福家書店としては、ほかのお店との差別化をはっきりさせていこうという方針があります。皆さんのイメージとして、いろんな本が取りそろえられている書店というと、最大手の書店さんを思い浮かべると思うんです。それなら、ちょっと変わったものがほしいと思ったときに、『福家書店に行ってみよう』と一番先に思い浮かべてもらえる場所として、お店の名前が浸透すればいいなと思っています。その方針に基づいてできた第一弾のお店が、ここなんです」

――なるほど。そういう意味では、コミック専門店というニッチなお店を展開されているというのも、ほかのお店とは違ってユニークですよね。

「そうですね。コミックストアではオリジナルのペーパーなど、独自の特典をつけるというフェアもよく行っているんですが、そういう取り組みもほかのお店との差別化につながっていると思います」

 

最新のトレンドが人々の心に刺さる街、新宿

――リニューアル後、お客様の反応はいかがでしたか?

「当初は、文庫も男性誌もなければビジネス書も少なくて、今よりももっと女性に特化した品ぞろえだったので、お客様からは『どうして置いてないの?』というお声をいただくことがありました。たしかに、女性だって文庫もビジネス書も読みますからね。それでどんどん扱うジャンルを広げていきました。実は、『CULTURE』というカテゴリも最初は無かったんですが、近くに映画館の『TOHOシネマズ新宿』が新しく出来たので、そのタイミングで作ったんです。新宿に訪れる人のニーズに合わせて品ぞろえも変えてきました」

――品ぞろえって、そんなふうに立地に左右されるものだと思いますが、新宿で書店を構えていて、新宿はどんな街だと感じますか?

「あらゆる人が集まってくる、中継地点のようなところがあると思います。新宿を目的に遊びに来る人よりも、乗り継ぎや、仕事の途中で寄る人のほうが多いのではないでしょうか。だから、最新のものを置いて、最新の情報を発信すれば、皆さんが関心を持ってくれる。つまり、物を選ばずに置くのではなくて、ちゃんと理由があるものを置けば売れるんだなあと思います。例えば地方だと、どうしても特色に縛られて、どんなに世間で売れていても売れないということがあると思いますが、世間で話題になっていれば、ここでは不思議と絶対に売れますからね」

――では、日ごろからいろんなことにアンテナを張っていらっしゃるんですね。

「そうですね。ニュースのチェックは欠かしませんし、近所の書店や、新しくできたスポットなどにも行くようにしています。私は雑貨担当で、発注や商談も行っているので、本に限らず幅広いものをチェックするように心がけていますね」

 

お客様を「おかえり」という気持ちで出迎える、アットホームな空間

――店内には女性の心をくすぐる仕掛けがたくさんありますが、皆さんでアイディアを出し合うんですか?

「スタッフが女性ばかりということもあって、みんなで閉店後や開店前の作業をしながら、『あれやったらおもしろいね』とか『これかわいくないですか?』なんて会話をキャッキャとしているんですが、そういうところからアイディアが生まれますね。スタッフはツボの資格を持っている人がいたり、ダンスを教えている人がいたりと、わりと個性的。みんなが積極的にアイディアを出してくれるので、もう企画が追いつかないくらいなんです。それに、誰かがPOPや装飾を作っていると、みんなで『わ~、かわいい~!』と言って盛り上がる。そうやってみんなが楽しんでやれば、お客様にもきっと楽しい空気が伝わると思っています」

――とても伝わってきます。手作り感あふれるPOPや装飾が散りばめられていて、お店全体にアットホームな雰囲気が漂っていますよね。

「お客様に『おかえり』って言いたいんです。もちろん商品を買っていただけたらありがたいですが、店内を楽しんで見てもらえたら、それだけでうれしい。最近では『何かほしいわけじゃないけど、楽しいから来ちゃった』と言ってくださる常連のお客様が増えてきたんです。こちらも、面出しの本や飾っている雑貨を入れ替えて、常に目新しくするように工夫しています」

 

時代とともに移り変わる、書店のあり方

――最後に、村澤さんご自身のことをおうかがいしたいのですが、書店員のお仕事を始められたきっかけは何だったんでしょうか。

「両親の影響で幼い頃から本がすごく好きだったんですが、一番好きな本を仕事にすることにたいして『ちょっと怖いな』という気持ちがあったので、ずっと避けていたんです。でも、就職をする前に一度、本屋さんでバイトをしてみようかなあと思い、近所の福家書店で働き始めたのがきっかけです。そしたら、いつの間にか社員になっていました(笑)。実際に書店員になっても、やっぱり本が好きな気持ちは変わりません。ただ、おもしろいかどうかよりも、売れるか売れないかという商売の目で本を見てしまいがちなので、そこは純粋なあの頃とは違いますね(笑)」

――子どもの頃からよく書店に行かれていたかと思いますが、村澤さんから見て、書店のあり方というのは時代とともに変化してきていると思いますか?

「こんなこと言っちゃいけないかもしれないんですけど、昔の書店員さんって愛想がない方が多かった(笑)。置いておけば売れるという時代だったと思うんです。それが今では、どの書店も接客のクオリティが上がってきている。そうじゃないと残っていけないですからね。やっと危機感を抱いているんだと思います」

 

<店舗情報>

福家書店 新宿サブナード店

東京都新宿区歌舞伎町1 サブナード1号

TEL  03-3359-2980

営業時間 10:00~22:00

HP  http://www.fukuya-shoten.jp/shop2/?id=306

 

【考察】

 お店のなかをじっくり見ていて感じたのは、「セレクトショップに似ている」ということでした。それは、単に雑貨がたくさん置かれているから雰囲気が似ているということではありません。例えば薬局やスーパーが、万人の求める商品が置かれているという品ぞろえの良さを求められるのとは違い、セレクトショップは、そのお店の世界観に基づきセレクトされた、「まだ知らない素敵なもの」との出会いが求められます。その「素敵なもの」を探すときのわくわくする気持ちが、この新宿サブナード店さんでも味わえる――その点で似ていると思ったのです。ここではそれを切り口に、新宿サブナード店さんのスタイルについて考えてみたいと思います。

 ECサイトが普及した現代では、買いたい本があるとき、わざわざ書店へ行かずにインターネットで注文する人も多くなりました。送料もかからないし、すぐに届く。コンビニで受け取ることもできるし、おまけにポイントまで貯まってしまう。ネットで本を買うことは、あまりに便利になりました。

 では、人々はどんなときに書店へ足を運ぶのでしょうか。

 例えば本の中身を見て買うかどうか決めたい人もいれば、状態の良いものを見極めて買いたい人もいるでしょう。その動機は人によって様々だと思いますが、ここで注目したいのは、「こういう内容の本がほしい」という漠然としたイメージしかないとき、ネットではなく書店で探す人が多いのではないか、ということです。一度に多くの本を手にとって見比べることができるのだから、書店で探すほうが効率的だと考える人は多いはずです。つまり、現代の書店は「お目当ての本を買いに行く場所」という側面よりも、「まだ知らない素敵な本を探しに行く場所」という側面の比重が大きくなっているのだと思います。その「探す」という体験そのものに付随するエンターテインメント性を増幅させたのが、新宿サブナード店さんのスタイルだと思うのです。

 リニューアルの最大の特徴は、コンセプトを「女性がきれいになるお店」というニッチな分野に限定したこと。これによって、「万人のニーズに応える書店」とは一線を画す、「ひとつの世界観を持ったセレクトショップのような書店」が出来上がりました。その世界観のなかに設けられたキャッチ―なカテゴリは、「あの棚もこの棚も、どんなものが置いてあるんだろう」と、まるでテーマパークに迷い込んだかのように、わくわくする気持ちをかき立てます。さらに、本だけでなく雑貨も充実して置かれていることで、あれこれと探す楽しさが増すのだと思います。

 また、居心地がよく、アットホームな空間を演出することで、そもそも「こういう内容の本がほしい」という欲求がなかったとしても訪れたくなる場所として、多くのリピーターを得ているのだと思います。

 村澤さんが話してくださったように、今は本をただ置いておくだけでは売れない時代と言われています。そんななか、大きなリニューアルを遂げ、その後もスタッフの皆さんの熱意と工夫によって日々進化してきた新宿サブナード店さん。現代にフィットした書店のあり方として、ひとつのスタイルを提示しているように思いました。

 

【本日の手土産】

やってまいりました、手土産のコーナーです。今日も唐突に始まります。

今回は「春がきた!」ということでいちご大福をお持ちしましたよ。訪問先も女性のみなさんですからね、女子ウケも狙ってみました。

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まるでお雛様のような、なんとも愛くるしいフォルムです。

あんまりかわいいので、バックを白にしてスタジオ風に撮影してみました。

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どのアングルから見てもかわいい、いちご大福のみなさん。

さて、前置きが長くなりましたが、お店は築地市場の場外に本店を構える「築地そらつき」さん。

すしざんまいさん本店のお隣にあります。

カラフルな大福から思わず期待してしまうとおり、餡のバリエーションが豊富なんです。左から「つぶあん」、「こしあん」、「抹茶」、「苺あんヨーグルトソース」、「カスタード」という魅惑的な布陣。

この5個入りパックは日替わりでメンバーチェンジがあるそうで、どのお味がパックされているかは、行ってからのお楽しみ。その日によって、1個から購入できるものもあれば、5個入りパックにしか入っていないものもあるのだそう。ちなみにお邪魔したときは、このほかに「チョコあん」と「白桃ホイップ」という、これまたそそられるお味が別売りされていましたよ。

いちごのフレッシュな酸味、上品な甘さの餡、もっちもちの食感――こんなに幸せなハーモニーがほかにあるでしょうか。

いちごが旬なうちに、ぜひ。

 

<店舗情報>

築地そらつき

東京都中央区築地4-11-10

TEL 03-6264-1763

営業時間 8:00~15:00

 

2015/07/17

第2回:BOOKSルーエ 花本武さんを訪問 ~棚名人にユニークな棚づくりの極意を訊く!の巻~

 

第二回目に訪問したのは、吉祥寺にお店を構えるBOOKSルーエさん。

 

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BOOKSルーエ
〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-14-3
TEL 0422-22-5677 
AM9:00~PM10:30
HP:http://www.books-ruhe.co.jp/

 

型にはまらない、一風変わったフェアを展開していることで有名な書店です。
まずは、訪問時の売り場を一部ご紹介しましょう。

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こちらは濱口瑛士さんの作品集発売を記念したフェア。

 

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店内には濱口さんの作品パネルもずらっと展示されています。
作品集を購入すると、特典として原画のポストカードがもらえるんだとか!

 

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こちらは2階へ続く階段の踊り場にあるショーウィンドウ。
毎月展示のテーマが変わるこのスペースは、ルーエさんの名物のひとつとも言えます。
なんでもキン・シオタニさんとコラボレーションし、オリジナルブックカバーをつくったそうで、6月はその原画が展示されていました!

 

今回お話を伺ったのは、そんなルーエさんの「おもしろい書店」というイメージを形づくった立役者のひとり、花本武さん。

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花本さんがつくる棚は独自性にあふれ、いつしか「花本棚」と呼ばれるほどに。
いかにして花本さんは「棚名人」となったのか、そして人を惹きつける棚をつくる秘訣とは何なのか、たっぷりと語っていただきました。

 

「花本棚」誕生秘話
――お店に通称「花本棚」と呼ばれる棚があるそうですね。
「いつしか言われるようになりました(笑)。あるとき、学習参考書を担当してた当時の店長に、センター試験が終わると赤本が全部撤去されて棚がガラっと空くから、『何かおもしろい棚作ってみてよ』って言われたんです。それは『お前の棚だ、好きにしろ』っていう言い方でした。でも、さすがに未知数で、とっかかりもないから、店長に相談したんです。すると、『文芸別冊』や『クイック・ジャパン』、『ユリイカ』みたいなワンテーマの特集を組んでるムックと、そこで特集されてる作家の文庫とかを混ぜて置いたらいいんじゃないかって言ってくれたんですね。これはおもしろいと思って、注文書を出版社から取り寄せて、白洲次郎など僕の好きな人物をピックアップして、さらにその人にスポットを当てた文庫本や文芸書をどんどん注文して並べていったんです」
――へえー、おもしろいですね。
「並べ方もこだわりました。その頃からほかの書店も見に行くようにもなっていたんですけど、やっぱりいい書店って同じ高さの本を整然と並べるんじゃなくて、いろんなものを一緒に置いているということがわかったんです。リブロ池袋本店は、雑誌の棚であっても、文庫本が置いてあったり、芸術書の棚にも雑誌が置いてあって、『あ、これはすごい』と思いました。こういうふうじゃないと、お客さんの脳内の地図とリンクしないって思ったんです。その意識もあって、いろんな大きさの本がバラバラに集まってるっていう棚を作りました。でも、僕がそういうガタガタした棚を作ってみても結局、リブロ池袋みたいにはならなくて、すごく異形の棚になったんですけど(笑)。そのあたりから、その棚を誰かが『花本棚』って言ってくれたんです」

 

書店員になろうと思った日
――ところで、いつから書店員さんのお仕事を始められたんですか?
「10年くらい前です」
――なりたいと思ったきっかけが何かあったんですか?
「それまでビルメンテナンスの仕事とか、印刷工の仕事をしていたんです。当時の自分には肉体派の仕事でお金を得るのが本筋なんじゃないか、労働の喜びっていうものがあるんじゃないかという考えがあって。でも、それだけでもあんまりおもしろくないなと思い始めて、仕事を辞めて、ふらふらしてた時期があったんです。『これからどうしようかなあ』と考えていたときに、部屋の本棚を整理してたんですね。本は昔から好きで部屋にたくさんあったので、『ああ、この本とこの本はこう入れ替えてこうするとおもしろいかな』とか考えながらやってたんです。そしたら『あ、待てよ』と。『もしこれが仕事だったらけっこういいんじゃないか』って、ふと思ったんですよね。それで、前から好感を持っていたこの店に、アルバイトで入ったのがきっかけなんです」

 

新人書店員・花本さん、「新潮文庫」を任される
――実際に書店員になられてみて、このお仕事についてどう思いました?
「おもしろいなっていうのはなかなか気付けなくて、やっぱり肉体労働の延長みたいな感覚で仕事をしていたと思います。いろんなことを覚えようという向上心はありましたけど、何かクリエイティブなことができる仕事だっていう意識はなかなか持てなかったですね。でも、うちの店ってアルバイトでもすぐに担当を持って、発注権限をもらえるんですよ。僕もすごく早い段階で新潮文庫を担当させてもらって、棚を任されたことがすごくうれしかったから、その棚を何とかしなきゃいけないと思うようになりましたね」
――そこからおもしろいと感じるようになっていったんですか?
「そうですね。どんな本をどんなふうに並べたらいいかを考えて、それを仕入れて並べるっていう一連の流れをやっていくうちに、自分で自由につくった世界観を提示できるということがわかってきて、どんどんおもしろさが生まれてきました。それからいろんなことをやりだしていったんですけど、だんだん新潮文庫だけでは満足できなくなってくるんですよ。新潮文庫の棚なのに、なぜかほかの版元の本が置いてあるっていうのをやりだしちゃうんですよ、どうしても(笑)」
――はははははは。
「越権行為なんですよ、完全に(笑)。別の担当者がいるから、その人に気も遣わなきゃいけないんですけど、そういう意識も低くて、わりとなんでも注文しちゃってました」

 

エキサイティングな棚づくり
――今まで手がけられた棚のなかで「これは傑作だ」という棚はありますか?
「売り上げが一番どんと上がった棚という意味では、階段のショーウィンドウの棚でやった、『ユリイカvs文芸別冊』。それは大ヒット企画で、毎年恒例になりました。12月と1月の2ヶ月間、そのふたつのカルチャー誌を対決させるっていう企画で、Twitterとかいろんなところで対決ムードをあおるんですよ。リアルタイムでどっちが売れてるかって公開してたんです」
――おもしろいですね! そういうアイディアってどうやって生まれてくるんですか?
「その対決させるっていう企画は何となく思いついたんですけど、どこかのお店を参考にすることもあります。『ここのお店おもしろいよ』っていう情報を聞くと、休みの日に見に行っては、いろいろ考えたりしてました」
――やっぱり、自分がお客さんだったらどんなものに惹かれるかっていうのが基準のひとつにあるんでしょうか。
「やっぱりそれは大前提にあると思います。自分がおもしろいと思わないとおもしろい棚にはならないですよね」
――じゃあ、これはいい棚になったなっていうときには、つくってるときからご自分がエキサイトしてる感覚がありますか?
「それはありますね。文庫担当だったときによくやってたフェアのパターンは、その著者の新刊が出たタイミングで、著者さんと何らかの手段で連絡をとって、本を10冊なり15冊なり選んでもらい、それを並べるというものでした。さらに、フリーペーパーをつくって、その著者さんからもらったコメントを載せるっていうこともしていたんですが、そういう仕込みは、すごくエキサイトしてましたね。自分の頭のなかにだけ、まだ完成してないフェアの青写真があるんですよ。その著者からもうリストが来てて、この新刊を出すタイミングで、確実に話題になる著者の頭のなかをのぞける。で、もう少ししたら、それをうちで提示できるんだっていうのはすごくエキサイトしますね」
――にやにやして口元が緩んじゃいますね。
「にやにやしながら、著者さんからもらったコメントをPOPに代筆するんです。それで本が届いたらPOPを貼って、本を並べて、『どうだい!』っていう。それは最高におもしろいですね」
――書店員になる前に本棚を整理していたときの感覚と、いま仕事として棚をつくってるときの感覚は違うものですか?
「基本的には変わらないですね」
――そのときのピュアな気持ちのまま。
「はい。家の本棚を整理してるのも、今でもやっぱり楽しいですし。好きな本を読んでいて、『ああ、いい本だったなあ』と思うと、自分の家の本棚で棚変えが始まるんです。それはそれでおもしろいし、仕事との境目は薄いですね」
――じゃあ以前は、汗水たらしてするのが仕事だっていう意識があったわけですが、そのときと比べて、今は仕事に対する意識って変わりましたか?
「変わったかもしれないですね。基本的に今でも、肉体労働といえば肉体労働なんです(笑)。雑誌出すのとか、腰も痛いですしね。そこの部分は変わらないんだけれども、やっぱりそれだけじゃなくて、頭脳労働でも、汗をかいたときと同じ爽快感っていうのは得られるなっていうのはさすがに学びました。クリエイティブなものでお金を得られるっていうのも、当然だなって思います」

 

吉祥寺だからこそ成り立つ仕事
――吉祥寺っていう場所もまたユニークですよね。
「確かにそうですね。ここでしか僕の仕事は成り立たないんじゃないかって思うくらい吉祥寺だからこそっていうのはありますね」
――どんな街だと思いますか?
「何でも受け入れてくれる街なんじゃないかなって思います。どんなものにでも興味を持ってくれるし、クリエイティブな人も多いし、いわゆる汗して働いてる人でも、すごくクリエイティビティのある働き方をしてる人がいると思ってます。実際、河出書房の『日本文学全集』を、明らかに土木系の仕事をしている人が定期購読してたりするんですよ」
――へえー、かっこいいですね。
「かっこいいんですよ。レジで買うときに、『カバー捨てて』って言うんです。『このままでいいから。袋もいらない』って。それが本当のインテリジェンスだと思います。吉祥寺はそういう人がいる街ですね」
――お客さんは若い方から年配の方まで幅広いですか。
「客層はけっこう幅広いと思います。でも、年配の方だからって感性が古いということはまったくないはずだから、年代も気にせずにやっていければいいなという気持ちはありますね。こういう感性の人に向けてこのフェアはやっていこうというように、年代とか性別とは違う切り口で層の見込み方をしていったほうがいいんじゃないかなという気はします」
――そういう視点が花本さんの棚に独自性を与えているのかもしれないですね。
「そうだといいですけどね。そういうのが理想ですね」
――では最後に、お店の自慢できるポイントをひとつ教えていただけますか。
「それこそクリエイティブなことを考えてる人がたくさんヒントを得られるってところだと思います。あとは、すごくつまらないことを言うと、3階の漫画の充実がすごいです(笑)」
――ははははは。
「秋葉原より充実してます。それを見に来てください(笑)」

 

【まとめ】
特に印象的だったのは、「いい棚ができるときは、仕込みの段階からエキサイトする」というお話。小さい頃から本が好きで、本棚の整理をするのも楽しかったという花本さん。仕事として本や棚に向き合うようになった今も、そういうピュアな気持ちが変わらずにあるからこそ、花本さんがわくわくしながらつくる棚は、本好きの心をくすぐるのだと思いました。

また、花本さんがこれだけユニークな取り組みをやってこられたのは、花本さん独自の視点やセンスによるところが大きいと思いますが、それを形にできること、そしてそれが受け入れられることは、吉祥寺という街に、好奇心旺盛でクリエイティブな気風が根付いているからこそだということもわかりました。
その意味で、書店の立地というのは、そのお店の個性を形成するもっとも大きな要素のひとつなのだと思いました。

ちなみに、ほかにも『ルーエの伝言』(『ルージュの伝言』をもじったそう)という、お店のフリーペーパーをつくっていた日々のお話や、フリーペーパー愛が極まって、なんと早稲田大学でフリーペーパーについて講義をなさったお話、新文化さんの社長さんに「君はおもしろい」と見初められ、新文化公式ホームページにてコラム連載をなさっていたお話など、ここではご紹介しきれなかった興味深いエピソードをたくさん聞かせていただきました。

コラム連載はまだ閲覧することができますので、ぜひ!
「ルーエからのエール ~『書籍礼賛』出張版~」(現在は連載終了)
http://www.shinbunka.co.jp/rensai/yell-ruelog.htm

 


【本日の手土産】
やってまいりました、皆さんお待ちかね(?)、手土産ご紹介のコーナーです。

今回は、CELI SWEETS(セリ スイーツ)さんのシュークリームとフィナンシェをお持ちしました。

 

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この、「ああ、もうこれは間違いない」っていう風格。
かぶりつくと、香ばしいシューがザクっと音を立て、濃厚なカスタードクリームがとろとろとあふれ出すのです。
想像しただけでうっとりとした気持ちになりますでしょ!

 

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見た目もかわいい、ハート型のフィナンシェ。
豊かなバターの香りがたまりません!
こちらはプレーンですが、抹茶もありますよ。

このほかにプリンも販売されています。
行列必至の大人気店ですが、お店の周囲にだだ漏れる甘~い香りを嗅いでしまったら、並んででも食べたくなっちゃう魅惑のスイーツ。
なくなり次第終了ですので、お早めにどうぞ!

 

CELI SWEETS FACTORY
東京都 中央区 築地2-14-4 フェニックス東銀座第二ビル1F
営業時間:10:00~19:00
TEL:03-6264-2290
HP:http://celi.asia/
※店舗は京橋にもあります。

 

 

 

2015/05/21

第1回:パルコブックセンター渋谷店の中澤佑さんを訪問  ~「棚」の世界は深かった!の巻~

突然ですが、今日からホームページで新しいコーナーが始まります!
題して、「東京書店員さん訪問記」。
私、MEKURU編集部の新人・小林が東京の書店にお邪魔し、書店員さんから日々のお仕事についてお話をうかがってくるというコーナーです。

 

皆さんにはお気に入りの書店はありますか?
ついつい長居をしてしまう書店、新しい刺激をくれる書店、不思議と心が落ち着く書店――。
私たちを惹きつける書店は、きっと、書店員さんたちのたゆまぬ努力と豊かなアイディアによってつくりあげられているのだと想像します。
私は書店へ足を運ぶたび、そんな裏側に迫ってみたいと思っていました。
とりわけ東京には個性豊かな書店がひしめきあっていて、おもしろそうです。

『MEKURU』はその名前のとおり、「紙の雑誌」であることがアイデンティティのひとつ。
当然のことながら、書店はなくてはならない場所であり、そこで働く書店員さんはパートナーといえるくらい大切な存在です。
そんな書店員さんの言葉を、MEKURU読者の皆さんに届けてみたい……!
むくむくと膨らませていた妄想を編集長とプロデューサーに打ち明けたところ、「いいじゃん、やってみなよ」と後押しされ、こうしてホームページで実現することとなった次第です。

本屋さんって、書店員さんの仕事って、おもしろい。
今日は本屋さんに寄って帰ろうかな。
読んでくださった方にそんなことを思ってもらえるようなページを目指して精進いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします!

 

さて、第1回目に訪問した書店は、パルコブックセンター渋谷店さん。

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パルコブックセンター渋谷店

〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町15-1
渋谷パルコpart1B1F
TEL 03-3477-8736
営業時間 10:00~21:00

 

宮藤官九郎さんを大特集した『MEKURU』の創刊号発売時、同じ建物の中にある「パルコ劇場」で、宮藤さんが作・演出を務めた舞台が上演されていたこともあり、売り場で『MEKURU』を猛烈プッシュしてくださいました。

ちなみに劇中で、三宅弘城さんと佐藤隆太さんが、パルコブックセンターさんに本を買いに行く映像が生中継ふうに流れる一幕があるのですが、そこで『MEKURU』の表紙の宮藤さんに落書きをするという嬉しいハプニング(?)も巻き起こるなど、『MEKURU』にとってはゆかりの深い書店です。

 

▼『MEKURU』創刊号発売時の華々しい売り場の様子

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▼現在は雑誌コーナーにてお取扱いいただいています!

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そんなパルコブックセンター渋谷店さんの中澤佑さんにお話をうかがいました。
まずは中澤さんのご紹介から。

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<プロフィール>
出身:神奈川
趣味:映画鑑賞、登山
好きな音楽:最近はオルガンのジャズをよく聴いています。
好きな映画:『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
好きな東京のスポット:渋谷

 

趣味の登山は、5~6年前から始めたそう。
「登山って、本との親和性もあると思うんですよね。ものすごく文系に近い体育会系なものという気がするんです。ただ行って、帰ってくる、その間にいろいろ考えるっていうところが、文学的な感じがします」
山の解放感に加え、読書と同じように、じっくり考える時間を持てるところが心地良いんだとか。

そんな中澤さんに、本を売ることの難しさや、理想とする書店像など、書店員として日々感じていることを語っていただきました!

 

「書店員の大事な仕事のひとつは『棚の編集をする』ことです」

――中澤さんが書店員になられたきっかけは何だったんですか?
「大学卒業後は一度ほかの仕事に就いたんですが、その後、うちのお店とは別の本屋で働き始めました。子どもの頃から映画と本が好きで、いつかは映画館とか本屋さんで働いてみたいって思っていたんです」
――普段は、基本的にどんなお仕事をされているんでしょうか。
「書店員さんはみんな同じだと思うんですけど、基本的には『本を売る』ってことですね。本って、普通の商品と違ってものすごく種類がたくさんあって、毎日新刊が入ってくるので、それを一番売れそうな場所に置かなければならないんです。もちろん置けるスペースが限られているので、反対に外す商品を選んで、それを返品しなきゃいけないんですよね。そういう商品の入れ替えが一番大切な仕事だと思います」
――何を残すかっていうのは売れた数だけじゃなくて、やはりお客さんの行動も観察しながら判断していくものなんですか?
「そうですね。それがすごく難しくて。やっぱり単純に、売れてる本を残しておきたいっていうのはあるんですけど、その本が隣にあるからこっちの本が売れるっていうことが結構あるんですよ」
――あー、なるほど!
「『平積み』(表紙を上向きにして平たく積むこと)とか『面出し』(表紙が見えるように棚に置くこと)のほかに、『差し』(棚に差すこと)になってるものもありますよね。ああいうのも、『差し』になっているのがこの本だから、『平積み』や『面出し』されている本が売れるっていうこともあるんです。お客さんが、並んでる商品の全体をパッと見た瞬間、『これ買ってみようかな』と直感的に思うこともありますし。そういうテクニックみたいなものが無限にあるんですけど、正解がわからないので、難しいですね。よく『棚を編集する』って言うんですけど、書店員の大事な仕事のひとつは『編集をする』ってことですかね」
――深いですね! その編集をするには、お客さん目線でどんな棚にしたら良いかイメージすることも大切っていうことなんですね。
「そうですね。お客さんの目線で考えるには土地柄を考慮することも大事だと思うんですよね。渋谷だったら渋谷らしい品揃えっていうのが必要で、単にほかで売れてるからという理由で置いても、売れないっていうことが結構あるんです。うちのお店だと20~30代のおしゃれな雰囲気のお客様が多いので、そういういろんな情報にアンテナを張り巡らせているような方にフィットする本を置いています」

 

「やさしい場所というか、誰でも入れる空間っていうのが本屋のおもしろいところだなぁと思います」

――実際に働いてみて、それまで書店員さんに抱いていたイメージとのギャップってありましたか?
「相当ありましたね。書店員というのは本の知識をたくさん持ってる方だろうなというイメージがあって、それは確かにそうだったんですけど、さらに体力も必要というのはびっくりしました。最初に勤めた書店では雑誌を担当していたんですけど、雑誌って量がすごいんですよ。だから完全に肉体仕事で、腕とか太くなっちゃって。本屋さんで働き始めたのに、体格良くなっちゃったっていう(笑)」
――そうだったんですね(笑)。逆に、ポジティブな面での発見っていうのはありましたか?
「やっぱり、知らない本や雑誌をいろいろ知れたのは嬉しかったですね」
――それまでお客さんとして接していた数よりも、膨大な数に接するわけですもんね。
「膨大なんです。やってみてわかったことなんですけど、本屋さんってあらゆる人がターゲットなんですよね。もちろんお店によって違いはあるんですけど、基本的には、本っていうものは老若男女、いろんな人が読むものなので、あらゆる年齢層の人が来るんです。それがわかったときに、そういう小売業ってほかにあんまり無いんじゃないかなって思ったんですよ。例えば服屋さんだったら、そのブランドのターゲットの年齢層に向けた商品しか置いてないお店ってことになるじゃないですか」
――確かにそうですね。
「こういう、間口が広い小売業っていうのは、本屋だけじゃないかなぁって思うんですよね。僕自身、大学生の頃は、よく本屋で映画までの時間を潰したりしていたんですけど、そういうことができる場所だと思うんですよ。だから、やさしい場所というか、誰でも入れる空間っていうのが本屋のおもしろいところだなぁと思って。実際に働いてみて、そのことをさらに思いましたね」
――では、ご自分の中での本屋さんの理想像みたいなもののひとつには、「誰もが来やすい場所」というのがあるんでしょうか。
「難しいですけど、理想はそうですね。正直、いろんな人に来てもらって、買ってもらわなくてもいいかなって思います。まぁ、買ってほしいですけどね(笑)。あと、デートの場所として使ってほしいっていうのはありますね」
――例えばどんなふうにですか?
「カップルで来て、『こんな本、俺読んでるんだぜ』みたいなことを彼女に自慢するとか(笑)」
――(笑)そういうコミュニケーションがとれる場ってことですね。
「実際、カップルの方も結構いらっしゃるんですよ。それぞれちょっと離れたところで立ち読みしていて、何か気づいたことがあったら『ねぇねぇねぇ』って話し掛けに行ったり」
――あぁー、それ楽しそうですね!
「そういうの見てると、こう、いいなぁって(笑)」
――(笑)いい本屋の使い方だなぁと。
「そうです。ひとつの在り方だなぁって思います」
――なるほど。では最後に、パルコブックセンター渋谷店さんの一番自慢できるポイントを教えてください。
「ほかではちょっと無いような商品を、おもしろい打ち出し方で置いてる本屋だと思うので、飽きさせないというか、来て良かったなって思ってもらえると思うんですよね。そういう取り組みをがんばってやっているつもりなので、ぜひ来てほしいなと思います」

 

自慢できるポイントを尋ねると、迷うことなく即答してくださった中澤さん。
そのまっすぐな眼差しから、お店に対する自信をうかがい知ることができました。
では、その「ほかではちょっと無いような商品」や、「おもしろい打ち出し方」とは…?
店内で展開されていた取り組みを一部ご紹介いただきました。

 

▼レシピ本コーナー

recipe (800x600)

 

この本のレシピが全て作れるように、レシピで使用されている調味料もあわせて販売されています。
近所のスーパーでは手に入れることが難しそうな商品なので、書店でレシピ本と一緒にそろえられると、すごく便利ですよね。

 

▼バッグ販売コーナー

bag (600x800)

 

海外の独立系書店オリジナルのトートバッグとエコバッグが販売されています。
いまや本以外のアイテムが買える書店も増えていますが、パルコブックセンター渋谷店さんはその先駆けなんだとか。

 

▼ギャラリースペース

drawing (800x600)

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェームズ・マクニュー氏のイラスト集の発売を記念し、ドローイング展が行われていました。
洋書や写真集の品ぞろえがとても充実しているパルコブックセンター渋谷店さん。
アートに関心の高いお客さんが多く来店するお店ならではの取り組みです。

 

このほかにも取材時には、とある体験型アトラクションが設置されていました。
専用の本棚から自分の好きな本を3冊選んでセンサーにかざすと、未来の自分の診断結果と、おすすめの一冊が書かれたシートが出てくるというもの。
ゴールデンウィーク期間限定のイベントだったのですが、小さなお子さんにも喜ばれ、連日大盛況だったそうです。

パルコブックセンター渋谷店さんは、こうしたユニークな展開によって、中澤さんがおっしゃったように「やさしい場所」として、より多くの人に開かれた空間になっているように感じました。

 

【まとめ】

今回、お話をうかがって特に印象的だったのは、「棚を編集する」という言葉。
棚というのは、書店員さんのスキルとセンスが光る、とてもクリエイティブなスペースだったのです。

それ以来、書店へ行くと棚を隅々まで見ては、なぜこの本は「面出し」で、この本は「差し」なのか……などと考えを巡らすように。
そうして本を漁るうち、あるとき、最初に手にとった「面出し」の本の良さが、後から手にとった「差し」の本が比較対象となることで、より明確になったことがありました。
もっと正確に言うならば、自分の興味のあること、あるいは求めていた情報が何であったのかということがピンポイントで明らかになることで、より一層その本を買うことの価値を見出していくような感覚があったのです。
「なるほど、こういうことか」とうなるように感慨に浸るとともに、「棚」をとおして書店員さんのお仕事の奥深さを垣間見ることができたような気がしました。

このように、私たちと本との出会いの瞬間は、書店員さんのひとつひとつのお仕事に支えられているのですね。
次回はどんな新しい発見があるのか、楽しみでなりません!

 

【本日の手土産】

このコーナーの締めくくりは、訪問の際にお持ちした手土産のご紹介です。
編集部がある築地近辺のお店の中から、個人的に気になる一品をお持ちしようと思っています。

今回は、築地市場内に本店を構える「茂助だんご(もすけだんご)」さんのおだんごです!

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茂助だんご本店

〒104-0045
東京都中央区築地5-2-1(築地市場内 魚がし横町1号棟)
営業時間:午前5時~昼12時
(一部お菓子は13時まで販売)
ホームページ:http://www.fukumo.jp/index.html
※店舗は築地市場内のほか、築地市場外と松屋銀座にもあります。

 

築地のグルメガイドで必ずと言っていいほど紹介されている、名店中の名店。
味はこし餡、つぶ餡、醤油焼きの3種類。
噛むほどに素材のうまみが広がり、そのやさしい味わいに思わず「んふふ」と頬がほころぶおいしさです。
老舗の風格漂うパッケージも、手土産としてお相手に喜ばれるポイントかもしれません。

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