MEKURU

MEKURU BLOGMEKURU facebookMEKURU Twitter
東京書店員さん訪問記

2016/10/24

第5回:大盛堂書店 吉田哉人さんを訪問 ~目の前は渋谷・スクランブル交差点 大盛堂書店の活気の源を探る!の巻~

今回の訪問先は、渋谷・スクランブル交差点のすぐそばにお店を構える、大盛堂書店さん。

dsc_0272

渋谷という街においてもっとも象徴的な風景である、このスクランブル交差点。
一度の青信号で最大3000人がすれ違うとも言われる、世界最大規模の交差点です。

映画やテレビ番組などで、「東京」や「社会」、「都会の若者」といったテーマの描写にモチーフとしてよく用いられるので、東京在住でない方にとっても見慣れた景色ではないでしょうか。
ソフィア・コッポラ監督の映画『ロスト・イン・トランスレーション』で登場したこともあってか、外国人観光客にとって日本のもっとも有名な観光スポットのひとつにもなっています。

さて、大盛堂書店さんがこの写真のどこにあるか、もうお気づきですか?

 

taiseido2

この大きな看板が目印です。

ここは東京屈指の繁華街であるセンター街の入口でもあり、まさに渋谷のど真ん中。
店内はいつもお客さんで賑わっている印象です。
実際、吸い込まれるように立ち寄ってしまったという経験のある方も多いのではないかと思います。

なぜ、大盛堂書店さんにはお客さんを呼び込むような活気があるのでしょうか。
そこに迫りたくて、今回取材をさせていただくこととなりました。

 

大盛堂書店さんは小規模のお店のように見えて、実は縦に長いつくりになっているのも特徴のひとつ。
地下1階には漫画やゲーム雑誌、1階にはファッションやデザイン、アート、音楽といった幅広いカルチャーの雑誌や書籍、2階には文芸書や実用書などが並び、3階はイベントスペースとして用いられています。

なかでもお店の顔とも言えるメインフロアの1階で、15年にわたり働いていらっしゃるベテラン書店員の吉田哉人さんにお話をうかがいました。

yosidasan-2

吉田さんは古書店で絶版の文庫本を探すのがお好きなのだそう。

 

 

急増した外国人観光客の来店

――日々働いているなかで、この立地だからこそ戸惑うことはありますか?

「驚かされるようなこともあるんですが、かなり感覚が麻痺している可能性はあります。渋谷はうるさすぎて嫌になっちゃう人もいると思うんですが、15年も働いているということは、僕はそのあたりがおかしくなっているんでしょうね(笑)。最近は、ここ数年で外国人観光客が本当に多くなったと感じていて、お店が観光スポットになればいいなと思っています。時間帯によっては外国人のお客様のほうが多いこともあるくらい大勢いらっしゃるので、どのように商品を案内したらよいかということも考えていますね」

――外国人観光客のお客さんからはどんなリクエストが多いですか?

「絵葉書や、英訳版の漫画のリクエストが多いですね。ほかにも青幻舎さんから発売されている、絵だけで描かれた『パラパラブックス』も売れていて、お客様からは“Fantastic”という感想をよく聞きます。本のことだけでなく道を聞かれることも多いんですが、『有名なスクランブル交差点って、まさかあれ?』と聞かれることがあるんですよ(笑)。時間帯によっては人が少ないので、思っていたよりもずっと小さく見えるんでしょうね」

%e5%a3%b2%e3%82%8a%e5%a0%b41%e9%9a%8e%e5%85%a5%e3%82%8a%e5%8f%a3

お店の入口付近にある外国人観光客向けのコーナー。『バラバラブックス』や英語版のガイドブックなどが並んでいます。

 

%e5%a3%b2%e3%82%8a%e5%a0%b4%e5%9c%b0%e4%b8%8b%e8%8b%b1%e8%aa%9e%e7%89%88%e3%82%b3%e3%83%9f%e3%83%83%e3%82%af

地下1階には英訳版の漫画コーナーも。”MANGA”という文字が目印。

 

 

若い女性が多く訪れるお店

――スクランブル交差点は様々な年代や属性の人たちが行き交う場所だと思いますが、お店にいらっしゃるお客さんはどんな方が多いですか?

「若い――特に10代の女性のお客様が多いです。やはり渋谷は若い人が集まりやすい街ですし、特にうちのお店は109がすぐそばにあったりして、洋服屋さんが多い立地。それに、そもそもお店の棚がピンクですからね……(笑)。開店当時の責任者がいないのでピンクにした理由はよくわからないんですが、それはかなりレンジを狭めて、うちのお店のイメージを決定づけたと思います」

――若い女性のお客さんが関心のある分野というと、どんなものでしょうか。

「やはりファッションですね。ほかにもアイドル雑誌やコミック、実用系の本もよく売れますし、学生さんだと就活本や資格の本を買われる方も多いです。若い女性に人気のある作家さんのトークショーにも足を運んでいただいています」

 

 

ジャンルレスにトレンドの本を盛る

――お店のなかで特に印象的なのが、入ってすぐの場所にある、様々なジャンルのトレンドの本が置かれているコーナーです。メイク本やスタイルブックがあったり、宇多田ヒカルさん関連の本があったり、レシピ本があったり……。トレンドの盛り合わせのように積まれているのが、なんだか熱気があって、おもしろいですね。

「あそこはどうしても、文芸書を置いてもまったくの無反応になってしまうんです。どういうものを置けば反応があるかというと、隣にファッション誌が置かれているので、それと近いジャンルの本。だからエンタメ系のノリになっています。実は、あそこはいつも試行錯誤しているんです」

――どんなところが難しいんですか?

「あの平台が三角形なので、それをどう活かして、どんなふうに置くかということですね。それはこの15年間の課題。毎日、テトリスだと思ってやっています(笑)。はみ出しすぎてもいけないし、でもいっぱい盛って、目立たせたい。悩みながら毎日入れ替えているので、あそこのディスプレイの仕方は、僕のなかでは『今日の僕です』と言っているような感じです(笑)」

――売れ筋の商品をお店の目立つ場所に集めて置いているのはいろんな書店で見かけますが、ジャンルごとにそれぞれの売り場で展開されていることが多いと思うんです。でも、こちらではジャンルレスにひとつの山にして置かれているというのが、小規模の大盛堂書店さんならではだなと思います。

「メイクやファッション、レシピなどの棚は2階にあるんですが、そこに入れてしまうと目立たないんです。でも1階に置いて目立たせたい本もある。だから、本来の棚と1階の目立たせる棚の両方で展開するようにしています」

――カテゴリをまたいで置くという意味では、ファッション誌が並んでいる棚に、藤田ニコルさんや越智ゆらのさんのスタイルブックも一緒に置かれていますね。

「あそこは意識的に置いているんですよ。藤田ニコルさんも越智ゆらのさんも、うちでイベントをやったこともあるんですが、彼女たちと近しいお店だというイメージを10代のお客様に持ち続けてもらうことが大事だと思っています。それで、映えるようにちょっとニッチに並べているんです。実際、うちのお店で『Popteen』や『Seventeen』、『LARME』あたりの雑誌を買ってくださるお客様が、そういうモデルさんの本を買ってくださっているのは数字にも表れています」

――では、かなり効果的なんですね。

「そうですね。こういった“クロス陳列”はこの業界では当たり前になっていますが、やっぱり大事なことだと思います」

 

dsc_0232

1階の中央にある平台。様々なジャンルの本がピラミッドのように陳列されています。

 

dsc_0236

女性誌コーナーの最前列には、若い女性に人気のスタイルブックがずらり。

 

 

人々を呼び込む、独特の雰囲気

――大盛堂書店さんの魅力のひとつに、「お店への入りやすさ」があると思うんです。もちろんこの立地も影響しているとは思いますが、それだけではなく、「いらっしゃい、いらっしゃい」って呼び込まれるような独特の雰囲気があるように感じていて。

「それはうれしいです。ここって“むき出しな場所”なんですよ。路面ですし、方角が南東に向いてるので、吹きっさらしなんです。本は太陽の光を浴びちゃいけないので、普通は書店って北向きがいいんですけどね(笑)」

――そういう店構えが呼び込まれるような活気を生んでいるのかもしれないですね。それに、店内の雰囲気からもそういう活気が伝わってきます。

「うちのお店では、お客様がいらっしゃったときには『いらっしゃいませ』、お帰りになるときには『ありがとうございました』と必ずお声がけをしているんです。昔、永六輔さんが『書店員はなぜいらっしゃいませと言わないんだ』というようなことを書かれていたことがありましたが、実は『いらっしゃいませ』と言う書店ってあんまりないんですよ。うちは落ち着いた感じのおしゃれなお店というわけでもないですし、商売人として『商売をしてるんだぞ』という気持ちも込めて言っています(笑)」

――そういう「商売をしている」という意識は、陳列や内装にも表れているように感じます。

「うちのお店はほかの書店と比べて、圧倒的にポスターが多いんです。なぜかというと、ここは広告がいっぱいあって騒々しい立地なので、もうお店もそれに合わせちゃえと思って。出版社さんにお願いしてポスターをもらっているんですが、宣伝効果もあるし、お客様を呼び込める。内装としてはうるさいですけど、それが活気を生んでいるならいいなと思います」

 

 

渋谷という街の空気感を感じられる場所

――こちらで15年働いていて、渋谷という街の変化は感じますか?

「かなり変わってきたと思いますね。リーマンショックの前まではキャバクラ雑誌やホスト雑誌がすごく売れていて、そういう本を1階に置いていた時代もありました。その頃と比べて一番わかりやすい変化というと、ファッションのトレンドです。当時の“ギャル”や“ギャル男”と言われていた人たちがいなくなりましたからね。2年前のノームコア(“究極の普通”を意味するファッション用語)ブームを境に、ギャル系のファッションは見なくなったんです」

――この渋谷のど真ん中にいると、そういう世の中の移ろいや時代の空気感みたいなものを、皮膚感覚として感じられそうですね。

「そうですね。それを素直に受け止めて、品ぞろえに反映していくよりほかないだろうと思っています。それに加えて、海外からのお客様が増えたという流れもある。そういう、いろんなもののかけ合わせのなかをうまく駆け抜けていくことができればいいだろうと思っているんです。お客様は渋谷にいろんな目的でやってくるので、それぞれのニーズにピンポイントで本を提供できればいいし、それが売れれば理想的ですね」

 

 

クセのある本もサジェストしたい

――大盛堂書店さんは、トレンドの本が並ぶなか、ちょっとマニアックな本も棚にささっているのがおもしろいなと思うんです。例えば音楽の棚には、ミュージシャンが書いた本に混じって、例えば『ニッポンのマツリズム』といった、毛色の違う、少しアカデミックな本もありますよね。

「それは僕が入れている本ですね(笑)」

――そうでしたか(笑)。どのような意図があるんですか?

「もちろん話題の本や新刊も置いているんですが、本屋で働いている身として『こういう本もあるよね』というサジェストをしておきたいんです。だからちょっとクセのある本も、不易流行の本も、両方バランスよく置けたら一番いいなと思っています。もちろん、どの書店にもありそうな本だけを見て帰ってもらってもいいんですが、『ああ、こんな本もあるんだ』と記憶にとどめてもらえるだけでもいい。あとは、その人が好きなときにその本のことを思い出すことができればいいだろうと思うんです」

――なるほど。それはなんだか、本が好きな方の発想だなと思います。単純に、売れ筋の本だけを取りそろえておけばいい、ということではないんですね。

「それは売り上げにつなげるためにも大事なことなんです。というのも、一緒に置かれている本によってその本が買いたくなるかどうかが変わってくることがある。つまり、売れている本だけじゃなく、そういう本と担当者が売ろうとしている本をどう組み合わせていくか、そのケミストリーがすべてだと思います」

 

 

待ち合わせ機能のある書店を目指す

――大盛堂書店さんって、非常に利便性の高いこの立地と、探しているものを見つけやすいコンパクトな規模感からして、「この本を買いたい」と目的が決まっている人が多くいらっしゃるお店なのかなと思うのですが、実際はいかがでしょうか。

「実際に“目的買い”のお客様はよくいらっしゃいます。でもその一方で、無目的に来ていただける場所にしたいという思いもありますね。この間、とあるセミナーで、『最近、無目的に本屋へ行くということがなくなっていて、本屋はだんだん待ち合わせ機能がなくなってきている』という話を聞いたんです。でもうちのお店の場合は、商売をするには本当にいい立地なので、そこをどう活かしていくかが生き残る術だと思っています。そのためにはアイキャッチになるものをたくさん仕込んでおいて、不特定多数の人にアピールすることが大事。そしてうちのお店が、読者と出版社との間の媒体として楽しめる空間になればいいんじゃないかと思っています。そのために、これからもがんばっていきたいですね」


<店舗情報>
大盛堂書店
東京都渋谷区宇田川町22-1
TEL 03-5784-4900
営業時間 9:30~21:00 不定休
HP http://www.taiseido.co.jp/

 

【まとめ】

大盛堂書店さんは、ユニークな書店です。
何がユニークかというと、例えばその立地条件や、外国人観光客の来客が多いことなど、いろいろと挙げることができますが、なかでも私がもっとも特徴的だと思うのは、お店の「雰囲気」です。

その店構えに、まるで手招きをされているかのように呼び込まれる感覚があり、ひとたび足を踏み入れると、「探してた本はこれでしょ?」「こんな本もあるよ」と本に話しかけられているような気分になるのです。
これを「活気」と言うのだと、お店へ訪れるたびに思います。

集客という観点から見れば、この立地条件は最高のアドバンテージと言えるかもしれません。
しかし、単に人通りの多い場所にあるからと言って、どんなお店にも活気が生まれるわけではないということを痛感した取材でした。

渋谷という街に流れる空気感を肌で感じながら、それをお店づくりに反映していく柔軟性。
そして、トレンドの本を取りそろえることに安住せず、書店としてのおもしろさを追及し続けていく姿勢。
それがあるからこそ、大盛堂書店さんは「活気のある書店」なのだと思います。

 

【本日の手土産】

今回お持ちしたのは、築地市場内にある喫茶店・センリ軒さんのヒレカツサンド!

2016-10-19-15-09-2201

テイクアウトすると、レトロなシールがかわいいパックに入れてくださいます。

 

2016-10-19-15-08-25-2

ぱかっと開けた瞬間に広がる、食欲をそそるバターの香りをかいでしまったら、もうかぶりつかずにはいられませんよ。
カリッと焼かれたトースト、肉厚でジューシーなカツ、甘じょっぱいソースに、ピリリときいたマスタード……。
初めて食べるのになんだか懐かしいような、ほっとする味わいです。

冷めていてもすごくおいしいですが、昔ながらの雰囲気が楽しい店内でいただくのもおすすめ。
築地市場が移転する前に、お早めにぜひ。


<店舗情報>
センリ軒
東京都中央区築地5-2-1 築地市場 8号館
TEL 03-3541-2240
営業時間 4:00~12:30

 

go to top page

NEWS

MEKURUのバックナンバー

お問合せ

© 2017 Gambit Co.,Ltd.